呉智英『読書家の新技術』
1982年の本で、1987年に文庫化されました。文庫版のあとがきで、読書会・出版界が変わっていないため、字句の改訂程度にとどめている旨が書かれていますが、この状況は今もほとんど変わっていません。したがって、著者の方法と戦略は今も有効である証拠に、本書の内容は全く古くなっていません。
著者の方法というのは、しっかりと基本的文献を読み、正確なデー他を押さえるということに尽きます。この方法は特に、いい気になって適当なことを発言したり、書き飛ばしたりするインテリに対して有効です。論語や聖書、プラトンやアリストテレスなんかを典拠を示しつつ本当にしっかり読んでいる人というのは意外に少ないからです。そのうえ、読んだふりをしている人が多いだけに、先方から勝手にコケてくれるというのが実情です。
著者はその点で軽薄なインテリ才子たちには、ほとんど戦う前から勝ってしまっています。冒頭で谷沢永一と山本七平がダメ出しされていますが、なるほどその通りです。こういうことは大家と称される学者にも結構あって、私もときどき見つけてしまうことがあります。私の場合はこのブログでしか言わないので、何も影響はありませんが。
辞書や本の紹介も面白いし有益です。改訂版が出るならあらためて手元に置いておきたい本です。
(1987年朝日文庫520円+税)
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