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2011年4月30日 (土)

ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』(新版)池田香代子訳

以前霜山訳で読んだときと印象がずいぶん異なります。実際、改訂版の原文からの翻訳だそうです。淡々とした語り口で地獄のような収容所生活が語られます。

今回読んでいて印象的だったのは「カポー」と呼ばれる同じユダヤ人の仲間内のボスたちのことです。要するに彼らは重支配の手先になっているのです。カポーは収容所内の最も下品で残忍な連中から選ばれます。

以前、学生も教職員も家畜のように扱う学校に勤めていたことがありましたが、そこにもカポーたちがいました。どうやらこれは全体主義的支配の常套手段のようです。権力論を書くときには是非ともこの貴重な経験を活かしたいと思っています。

最高権力者からお墨付きをもらっているという事実が、自分たちは何をしても許されるという特権意識を生み出すように見えます。しかし、その意識が組織の上の方に行くにつれてどうなるのかということはまだまだ研究の余地があります。

フェレーロなんかは、独裁者は凡人の思いもよらないような「恐怖」を覚えるものだと、まるで見てきたかのようにこれを描写しています。そうかもしれません。

収容所から出てきた著者は、奥さんも子どももこの世にいないことを後に知ることになります(そのことは本書には出てきません)。本当に地獄を見た人です。しかし、本書の語り口はどこまでも柔らかく、恨みがましいところがありません。すごいことです。

(みすず書房2002年1500円+税)

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