戸部良一他『失敗の本質—日本軍の組織論的研究』
日本人の組織的弱点の見本市のような本です。日本軍だけでなく、官僚や企業、大学など日本人によるどんな組織にでも当てはまります。今回の東電も政府もまさしくそのまんまです。戦力を逐次投入して被害を拡大再生産させるなんて、ほとんど当時の戦略をコピーしているかのようです。
大本営のエリートは現場に出る努力をしなかったとありますが、この伝統は官僚がしっかり受け継いでいますし、官僚とつきあう大企業も次第にこの文化に染まっていきます。だって、こっちの方がラクですもんね。
はっきりした戦力目的を立てず、内部の隠微な派閥抗争に明け暮れ、現場からの声を黙殺し続けているとみんな顔つきが役人風になってくるのです。伝染病ですよ、これは。そして、今ではわが国のいたるところにこの病が蔓延しているのです。
だからどんな組織でも弁舌爽やかなポーズをとるのだけがうまい無能な臆病者が「ういやつじゃ」なんて思われて出世してしまいます。気取るのだけは一人前ですが、それをとったら何も残らないので、本人としては必死の演技なのです。
本書では山本五十六が結果として以下に凡将であったかということがわかるように書かれています。これは本当にその通りだったと思います。まだ結構神話が残っているので、著者たちも言うのに勇気がいったことでしょう。
ま、とにかくいろいろと身につまされる本です。「戦術の失敗は先頭で補うことはできず、戦略の失敗は戦術で補うことはできない」(291頁)って、至言でしょう。経営者は真剣に読んでほしいですし、一般社員にとっても「うちの会社は大丈夫だろうか」と点検するのに役立つ本です。
やばいことからは目をそらしたくなりますが、勇気を持たなくちゃですね。と自分に言い聞かせているところです。
(中公文庫1991年762円+税)
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