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2011年4月15日 (金)

大道珠貴『しょっぱいドライブ』

元タレントで中近東だかアフリカだかに一人で出かけて良いレポートを書いた女性がいたと思いますが、ぼんやりした記憶のまま間違えて買ったのがこの本でした。全然違う日本流湿潤系純文学での芥川賞受賞小説でした。

芥川賞を取るには文章が達者で、独特の文体を持っていることと、審査員の知らない世界を教えてくれること、そして、教養があってもストレートにそれを出さないという三点が重要で、このうち少なくとも二点を欠いていたがために島田雅彦は六回も落選したという話がありますが、気がついたら選考委員になっていたのは、まずはめでたいことでしょう。

本書はこの三点をすべて満たしていて、女性の内面を探るという審査員のおじさんたちのスケベ心までをも満たしてくれます。主人公の女性の奇妙な恋愛対象になっているのが老人だったりおじさんだったりすると、余計そんな強みが光ります。審査員の知らない世界と言えば言えますが、この後芥川賞がもっと若い女性の風俗小説っぽくなったのは、応募者が本書を読んだためではないかと勘ぐってしまいます。

そう、ある意味で誰でも書けそうな気にさせられる本なのです。もちろん気にさせられるだけで、本当に書くことができるのは一握りの才能のある人だけですが、小説でも書いてみるかという若者を勇気づける役割を果たした本だと言うことができそうです。

個人的には結構ベッドシーンが書かれているので、文学におけるこれを毛嫌いする私としては、苦手な部類に入る小説でした。でも、喜ぶ人もいるんだろうなあ、とも思っちゃいます。

現在、本書と平行して読んでいるサラマーゴの本を読むのに難渋していますが、これはテーマが深刻なのと、描写がホラーよりも生々しいためです。こんな際だった構成力と表現力に比べると、芥川賞というのはあくまで新人賞の一つに過ぎないんだなあと実感します。

かったるい小説ですが、文章は上手で、女性の内面をあーでもないこーでもないと描写したりすると、結局伝統的私小説世界が展開します。ま、これはこれでいいんですけどね。ときにはもっとスカッとした小説を読みたくなります。次に読む本は慎重に選ぶつもりです。

(文春文庫2006年400円+税)

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