小室直樹『日本の敗因―歴史は勝つために学ぶ』
大東亜戦争の敗因を分析することは、日本社会の宿痾の自覚につながります。本書は社会学的視点で日本軍の生体と修正を分析していて見事です。たとえばABCD包囲網はオランダのところだけ突破しておけば十分だったというのはなるほどそのとおりだったかもしれません。日本の強さも弱さも徹底的に検証されています。
で、結局のところ軍事官僚エリートがいつの間にか戦争の目的を見失い、組織の存続だけをはかるようになるというのが今日の官僚にも見事に受け継がれていることがよくわかります。
官僚だけではなくて、国民の多くが官民一体の庇護を求め続けて土建業国家複合体を形作ってきたために、官僚的発送が国民の隅々にまで浸透してしまっています。
お役所は言うまでもなく、会社も行政からの天下りを受け入れることで、幹部から下々に至るまで官僚化していきます。潰れる寸前のダメ企業なんか旧日本軍の迷走ぶりと軌を一にしているように見えます。
そういうところにはミニ辻政信やミニ南雲忠一がいっぱいいるんです。組織的DNAもそのまま受け継いでいるとしか思えないくらいです。開戦通知を遅れさせたアメリカの日本大使館の井口貞夫3時間と奥村勝蔵書記官なんかもうじゃうじゃいます。
こうしたエリートがお咎めなしというのも、ダメ会社の幹部が致命的なミスをしてもお咎めなしどころか出世してしまうのと本当によく似ています。
兵士を大事にしないという点でも、オリンピック選手団の役員がビジネスクラスで、選手がエコノミークラスに乗るというあたりにしっかり受け継がれています。
この空気を変えるのは大変なことです。でも、変えないと会社も国も滅んでしまいます。今日本全体が正念場にいるのでしょうね。
(講談社+α文庫2001年880円)
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