『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い 禁じられた数字〈下〉』
タイトルにもあるとおり、上巻の内容を否定するような感じですが、否定することで物事の両面をとらえるという高度な仕掛けになっています。
というのも、著者は「あらゆる経済活動は、会計と非会計のバランスをとりながら動いている」(228頁)とみていて、会計だけでは世界の半分しか語れないと考えているからです。
公認会計士だったら、会計を知っていれば経営は万全ですなんて営業しそうな気がしますが、そうじゃないところが面白いところです。
それでは著者がどうすれば経済、経営活動をうまくやっていくことができると考えているのかというと、「妙手を打て」(196頁)と言います。妙手とは会計と非会計の両方を一挙に解決させる第3の道のことで、とりあえず「あれか、これか」という考えをやめて解決に至る3〜4つの具体的ケースが解説されています。さすがにそれはここでは書けませんが、なるほど妙案だと思われるものが載っています。
著者は予算計画に縛られないKPI基準(重要業績達成指標)を推奨しつつ、ビジネスの世界では計画進行からの脱却が進んでいることも紹介してくれています。いわゆる脱予算経営のことですが、確かに環境の変化に対応できなければいくら大企業でも恐竜のように滅んでしまいますからね。
そのほか行動経済学の知識もちりばめられていて、かなりの勉強家ですし、小説仕立ての箇所も効果的です。元々小説『女子大生会計士の事件簿』でデビューした著者ですから、このあたりの読者サービス精神はお見事としか言いようがありません。
相変わらず古い経営・会計手法にこだわるしか能のない企業トップに是非とも読んでもらいたい本です。
(光文社新書2008年700円+税)
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