ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』[新装版]雨沢泰訳
恐るべき小説です。何度も中断しながらようやく読み終えました。ある時突然人びとが次々に目が見えなくなり、見えなくなった人から順番に隔離施設に入れられますが、そのうち世の中のすべての人が見えなくなります。
隔離施設にも食料が届かなくなり、惨憺たる状況になります。人びとのあらゆる欲求がむき出しになり、ここまで書くかというくらいえげつない情景が繰り広げられます。
細かい点では突込みどころもありますが、予想される悲惨さが徹底的に理詰めに、かつ具体的に書きこまれています。糞便とか屍体とかレイプとか殺人とかここまで書かなくてもと思うのは日本人的な感想かもしれません。これはヨーロッパ人の作家らしい特徴なのかも。
本小説は映画化もされていますが、確かにそれぞれのプロットは映画に向いています。ただ、このまま映画化されているのだとしたら、あまり観たくないですね。
昔、食虫植物が目の見えなくなった人たちを襲うというSF映画がありましたが、そんな感じでしょうか。テーマとしては同じノーベル賞受賞作家ゴールディングの『蝿の王』の世界に近いところもあるのかも知れません。実は『蝿の王』はいつかは読もうと思って長らくそのままですが、この際読んでみましょうか。
本書はきょうびには珍しく英訳からの重訳です。ポルトガル語ということでいい翻訳家がえられないのかもしれませんが、訳文としては読みやすいので、まあ、読者としてはどうでもいいことです。
(NHK出版2008年1800円+税)
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