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2011年4月19日 (火)

養老孟司『こまった人』

『バカの壁』が売れすぎてこまった人になってしまった著者ですが、『バカの壁』は編集者がまとめたその腕前が売れ線に乗ったというわけで、著者が自分で書いた文章はもっと毒があり、破壊的です。

本書なんか結構毒をまき散らしていて、読者を失うのではないかと心配になりますが、失ったくらいでちょうどいいのかもしれません。著者のコアな読者は著者の論理が飛躍するところに快感を得るくらいの論理的でなおかつ感性の鋭い人なのだと思いますから。

著者の指摘でへぇーっと思ったのは、鎌倉の鶴岡八幡宮が戦の神様だということで、そこにお参りしても軍国主義者とはみなされないというくだりです。なるほど言われてみればそうですね。

また、ケセン語訳聖書の存在も初めて教えられました。気仙沼のケセンです。ぜひ読まなくては。

それから「本当の自分だとか、個性を持ったこの私だとか、自分探しとか、若い人達が変なことをいうようになったのは、むろん年寄りのせいであろう。年寄りだって、どこかそう思っているに違いないのである。だからいくつになっても、同じことをやっているのであろう」(157頁)という指摘は新鮮でした。関心があればその先を読んでみてください。なるほどこういう見方があるのかと虚を疲れました。著者の面目躍如です。

(中公文庫2009年571円+税)

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