片桐はいり『わたしのマトカ』
映画『かもめ食堂』の緑さん役で出ていた著者のフィンランド旅日記。マトカはフィンランド語で旅を意味する言葉だそうです。『かもめ食堂』はオールフィンランドロケの日本映画でしたので、著者は3ヶ月間フィンランドに滞在していたわけです。めっちゃ面白かったです。
日垣隆が「おもしろい本は、おもしろく書かれている本のことではない。おもしろく生きている人が書いたものだ」と新刊『電子書籍を日本一・・・』で書いていましたが、著者はほんとうにおもしろく生きている人だと感心しながら読みました。
あとがきで著者は「大学の卒論で規定枚数ぎりぎりの論文を書いたきり、十枚以上の原稿なんて書いたこともない。書きたいと思ったこともない」と述べていますが、どうしてどうして。目の付け所がユニークで、言いたいことをうまく言ってしまえる表現力があり、それが生きのいいリズムを刻んでいきます。見事な文章です。
坂田明や山下洋輔のようなミュージシャンの文章と通じるものを感じます。おもしろく生きている点で共通しているのでしょう。
フィンランドののんびりした空気に馴染んでしまって、東京に帰ってきても何事にものんびりと鷹揚に構えるようになった著者のスタンスはその後どうなったのでしょう。もうすっかり東京の慌ただしさに合わせられるようになったでしょうか。女神のような穏やかな気持になった著者のその後も知りたくなります。続編のエッセーを探さなくちゃ。
(幻冬舎文庫平成22年457円+税)
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