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2011年6月28日 (火)

岩田靖夫『いま哲学とは何か』

先人の哲学を振り返りながら平和の哲学を探る意欲的な本です。ソクラテス、プラトン、アリストテレスにはじまり、レヴィナスやロールズまできっちりとした読解が示されているところはさすがです。哲学を読み解く力は同時代の講壇哲学者のレベルをはるかに凌駕しています。

著者の読解はユニークでかつ説得的です。決して教科書的な人ではありません。たとえば、レヴィナスについてはこんなことを言っています。

「レヴィナス哲学はあまりに難解なので、それについて書く者は自己流の理解を示すほかはない」(208頁)

この開き直りぶりが実はレヴィナス本人の思考の波長と合っていることを著者はよく知っているのでしょう。たいしたものだと思います。

ただ、最終章で復讐の連鎖を断ち切り、戦争を放棄するということにかんして、著者が日本国憲法9条を称揚するところには違和感があります。あんなアメリカに作ってもらったつぎはぎだらけの条文のかわりに、同趣旨であっても著者ご自身で戦争放棄の哲学に基づいた表現を紡ぎ出してほしかったと思います。

結果的に岩波書店の傾向にマッチした本になっているのはいいとしても、最後のところでご自身で考えることをもっと推し進めてもらっていたら、その立場はともかく、敬服に値する哲学者的態度だったんですが。

まあ、ご本人はおそらくとてもいい人なんだろうと思います。いい人過ぎて私のような悪人というか罪人は、金輪際友だちにだけはなれない気がします。

(岩波新書2008年700円+税)

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