森博嗣『臨機応答・変問自在』
著者が国立N大学工学部の助教授時代だったころ(現在は作家専業)、学生からの質問とその応答をまとめた本です。学生たちの面白い質問に対する答えが、もっと気が利いていて面白いという、そういう本です。
印象に残った応答をいくつか挙げておきます。
Q:新しい考えを思いつくにはどうしたらいいですか?
A:真剣になってひたすら考えること。必ず何か思いつくでしょう。思いつかないのは、考えていないから。これはどうやったら五十m先へ行けますか? という質問と同じです(109頁)。
ダメ会社の経営陣にも読ませたい。社員から広く意見を募集とかしているうちにどんどん左前になります。流行歌の作曲家は毎日五十曲以上つくると言いますが、有能な経営者は常に二桁のアイデアを思いついては即座に実行、ダメならすぐに撤退という感じでやってるはずです。アイデアもスピードもないなら企業としての取り柄はありません。官僚じゃないんだから。
Q:成功するために必要なもののうち、九十九%は努力で、残り一%は才能だといいますが、先生は才能というものが存在すると思いますか?
A:思います。努力できることが才能。だから、成功は百%才能だと思う。才能は持って生まれたものではなく、思い立ったときに、あるいは、やる気があるときに生まれるもので、いつでも消える。自分自身をどれだけコントロールできるのかが才能です(111頁)
そうなんですよね。
Q:先生は面白い人だと思いますが、人の性格、個性は遺伝によるものなのか、どちらが大きく影響するでしょうか。
A:子供のときの性格は遺伝。大人になったら、自分の頭脳が性格を作る。考えているとおりになります(41頁)。
観察は鋭く、深いと思います。組織では出世していくに従って性格が加速度的に悪くなる人をよく見かけます。たぶん才能に加えて相当よこしまなことを考えているんでしょうね。
Q:森先生の研究で何か画期的なものはありますか?
A:ある。
こういう素っ気なさが好きです。日垣隆のツイッターの応答にも似たところがあります。素っ気ないようで愛情深いところが感じられます。近年大学はお辞めになりましたが、学生たちにも強い印象を与える先生だったのでしょう。質問からもそれはうかがえます。大学にとっては大いなる損失ですが、ご本人にとってはもちろんよかったと思います。
(集英社新書2001年680円+税)
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