大前研一『日本の真実』
2004年の本ですが、本書に書かれていることは実に正しく、その正しい見通しとそれに基づく提言が、これまた今日に至るまでほとんど日の目を見ていないということに驚かされます。2011年の今読んでも何も変わっていないどころか、事態はいっそう悪化しています。
世の中に正しいことを見通し、具体的な提言までしてくれる人は、そんなにたくさんいませんが、そういう提言が実行されないということについては、新たに社会学的なテーマが見出せそうです。
著者はその原因もよく見えていて、政・官・財にマスコミと御用学者の「鉄のペンタゴン(五角形)」に加え、さらに検察、国税、弁護士のような、本来正義感で動くべき期間も取り込んで「鉄のオクタゴン(8角形)」の利権システムがその中心にあるといいます。これでもはや「今では政府にたてつく人も組織もほとんど見あたらなくなってしまった」(17頁)のです。
最近の検察スキャンダルも、この流れの中から起こってきたことがよくわかりますね。
もっとも、著者はこうしたことを単なる印象ではなく、しっかりした実証データに基づいて発言しているので、たとえ結論ににわかに納得できなくても、少なくともその数字については付箋を貼っておいて後でじっくり考えることができます。
どんな数字があるかというと、たとえば、バブル後の10年で銀行救済に使った公的資金が約48億円、
預金者に支払うべき金利を自身の不良債権処理に使った金額が約50兆円、あわせて100兆円近くものお金が銀行のために使われた(32頁)ということなどです。
このことを考えると、造幣局で2兆円を刷って地震の被害者に配れと日垣隆氏が言っていましたが、確かにマクロ経済には影響しないくらいの誤差の範囲です。数字をしっかり押さえて論理的に考えることの大切さを教えられます。
日本人は「集団IQ」がどんどん低下しているように感じると著者はいいます(33頁)が、確かにみんな護送船団の中で旧態依然の安楽な夢を見ています。官僚化したところからどんどん腐っていっているのが今日のわが国の企業に共通する傾向です。
当時よりも状況が悪くなってきているだけに、希望の書とはなりにくいかもしれませんが、勉強になります。まずは自分のいるところをどうにかしたいですね。著者は「国は変わらない」という前提の下に、個人や企業がいかに生き延びるかを考えるべきなのだ」(140頁)と言います。ただ、その企業もまた官僚化してしまっているので、なかなか希望が見出せないでいます。
そうなるとやっぱり個人が生き延びることだけを考えなければいけなくなりそうです。そうならないようにしたいんですけど。組合活動なんかも本来そのためにやっているんですけどね。
(小学館2004年1,400円+税)
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