朱川湊人『都市伝説セピア』
ノスタルジック・ホラーの名手と言われるだけのことはあります。昭和30年代の懐かしさと、怖い話がうまく融け合っています。映画『三丁目の夕日』が流行るくらいですから、このころの雰囲気は昭和30年代を経験していなかい人たちにの目には歴史小説のような時代背景として映っているのかもしれません。
で、もちろん、この時代を経験した人たちにとっては懐かしさがこみ上げてきます。著者は1963年生まれですから、小学校低学年ころの思い出がよく登場しますが、あの高度経済成長の時代にどんどん取り残されて、リアリティーを失っていったものの一つが幽霊や妖怪、あるいは恐怖譚だったような気がします。
それはときどき思い出したように都市伝説として蘇りながら、現実の残虐な事件は変わらず生じていても、お話としてはそのつながりはなくなっていきました。
そのエアポケットを埋めるように存在し、輝きを放っているのが著者の一連の小説のような気がします。怖いけれども、読み出すとやめられなくなりますし、物語の展開を助ける仕掛けだけでなく、思わずじーんとくる場面もしっかり用意されています。
本書は著者のデビュー作ですが、お見事としか言いようがありません。「フクロウ男」なんかその構成にびっくりさせられました。
(文春文庫2006年505円+税)
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