橋本治『愛の矢車草』
ちょっと、あるいはかなりヘンな愛のかたちを描いた短編集。橋本ワールド全開です。でも、愛はコミュニケーションの形の一つだと思えば、下着泥棒や同性愛者や一児の父になってしまった小学生の話もOKです。
それぞれのキャラクターの思考や台詞が綿密に書き込まれていて、それぞれにせつないリアリティーを感じさせられるのは、もちろん作者の才能のなせる技です。
それで、作者の他にこういう小説が書ける人はいるだろうかと考えてみると、いないのです。実は天才作家。自分をそう見せるように演出していないので、気がつかれていないだけのことです。文芸評論や時事評論を読んでみると、思想家としても抜きんでていることがわかりますが、小説家としてのこの独特の才能はもうちょっと正当に評価されるべきではないかと愚考します。
(新潮文庫昭和62年360円)
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