木田元『哲学と反哲学』
本書は著者の専門論文を集めた本なので、読みやすいとは言えませんが、私自身にとっては実に有益な本でした。
特にアヴェナリウスやシェーラー、そしてマッハの思想史的位置づけについて教わるところが多々ありました。アヴェナリウスなんか翻訳がありませんから、ドイツ語を読むのに時間がかかりすぎる私にとっては、こうして紹介してもらうと本当に助かります。
カール・ポランニーはマッハと同様に、アヴェナリウスをそれなりに評価していることがわかる文章もあるので、どんな哲学者なんだろうと気になってはいましたが、本書で少し見取り図の配置がわかってきた気がします。
シェーラーは著作集が出ていますが、ちゃんと読んだことはありませんでした。本書ではユクスキュルとの絡みもあり、思想史上重要な人物だったことがわかります。幸い大学の図書館に著作集があるので、いつかちゃんと読んでみます。さしあたり本書にとりあげられている本を探します。シェーラーはハンガリー思想家とも交流があるので、読んでいくと何か引っかかってくるかもしれません。
著者はしっかり文献を読み込んで、かつ新鮮な解釈を提示してくれます。ニーチェ、ベルグソン、マッハの3人に共通する特徴を「ダイナミックな生の立場からする存在論」(115-116頁)と規定するあたりは実に冴えていて、格好いいです。
同様に、フッサールもハイデガーも「世界の根底にあって、それを支えてはいるが、けっして世界にとりこまれることのない根源的自然につき当たることになった」(73頁)ととらえているところが新鮮で、説得力があります。ハイデガーが「大地」と呼んだあの根源的自然のことです。
こういう読み方は一朝一夕にできるものではありません。日頃著者がどれだけきっちりと真剣にテキストに立ち向かわれているかが分かります。
(岩波現代文庫2004年1100円+税)

