川上弘美『溺レル』
恋愛小説は苦手ですが、著者のそれは生々しく、いやらしくならないのが不思議です。ダメ男や退屈な女性が出てくるダメ恋愛ですが、こんな恋愛の機微が文学に昇華されるのは著者の文章の力でしょうね。
とりわけ500年来付き合っている男女の話や、心中で先に逝ってしまった女性の言葉で綴られる短編は独特の雰囲気が素敵です。
ただ、生々しくないとはいえ、性愛の描写は個人的には好きではありません。まあ、これは好きな人もいるでしょうから、割り引いて考えてください。
それはそれとして、毎度のことながら文章が本当に見事だと思います。
ところで、著者の小説はインテリが競うように解説を書いていますが、本書の種村季弘の解説はなかなかいい感じです。ポストモダン思想にからめたら大抵失敗しますが、そんなバカなまねをしないところがさすがです。
(文春文庫2002年429円+税)
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