マックス・ウェーバー『古代ユダヤ教』(上)(中)
旧約世界の社会学的分析を世界で初めておこなった祈念碑的著作です。今までほったらかしにしていましたが、先日橋爪=大澤対談を読んであらためて挑戦する気になりました。
さすがにウェーバーは只者ではないので、イスラエルが諸氏族の宗教をまとめる形で成立したため、ユダヤ教では厳しく偶像崇拝を禁じることになったとか、慧眼が随所に光っていますが、特に次のようなフレーズはウェーバーらしいなあと思いました。
「この世界の進行について驚嘆する能力こそは、この世界の意味を問うことを可能にする前提条件である」(509頁)
マルクスやフロイトが言っても不思議ではないような現代思想っぽい語り口ですが、ひょっとしたら当時の流行だったのかもしれません。ただし、本書はもっと手堅い文献読解に基づく分析の方が圧倒的に多いです。
そして、その分析の手際の見事さには驚かされます。何せ、さまざまな文化潮流が交錯し、相当ごった煮状態だったところを強引にまとめた旧約聖書ですから、その腑分けする手つきの鮮やかさには名人芸を感じます。最初にこれに手をつけただけでもすごいのに、その後もこれを超える社会学的分析ができるかどうか、というくらいどえらい仕事です。
翻訳は原文の長い文体をそのまま活かして日本語にしていますが、文章として不自然なところはあまりなくていいと思います。ただ、訳語で「プラグマ論」(「プラグマティック」)とか妙な感じの言葉が散見します。カタカナ語も多くて「シェーマ」(「図式」とかじゃダメ?)を連発して損しています。また、日本語で「実らしい」とあるのですが、これも見慣れなくて気になりました。
下巻を読んでからまた書きます。
(岩波文庫1996年上720円中620円)
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