川上弘美『センセイの鞄』
この作家らしい恋愛小説です。こういう微妙な人情の機微を描くのが本当に見事です。世の中のお年寄りに希望を与える設定ですが、実際にこういう相手と恋愛関係になるのは面倒くさそうです。女性も男性も。
この普通に考えると面倒くさそうな、よく言えば個性的な登場人物たちだからこそ、こういう物語が成立するのでしょうけれど、構成も周到で細部の描写も絶妙で、気がつけば物語の最後までうまーく連れて行ってくれます。
途中でこの世ともあの世とも付かない世界に入り込んでしまう場面もあって、気がつけばたんなる恋愛小説ではなくて、いつもの川上ワールドだったりもします。そちらに行きっぱなしなのも困るのでしょうから、それはまた別の作品で堪能することにします。
(文春文庫2004年533円+税)
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