斎藤美奈子『月夜にランタン』
いつもながら切れ味抜群の文章です。普通の読者の視点から、これはあんまりでしょ、というところを切ってくれるのがいいんです。それと、いつの間にかこちらが作者の術中にはまってヘンなことをヘンだと思わなくなっているようなところを、あらためてはっきりとヘンだと言ってくれるので、助かります。王様が裸でも誰も何も言えない空気になるのが日本社会の常ですから。
普通だったらこれだけ話題になっている本を丹念に読み比べる人は評論家でも多くないと思いますが、いくら仕事とはいえ、その辺のマメさというのに感心させられます。意外ときっちり読む評論家っていないんですよ。書評を当てにして読んでみて「あれ!?」と思わされることもあるので、書評子ですら当の本を読んでいないことがあるとわかります。
著者は辛口のことを言うばかりでなく、良い本を正当に評価して勧めてくれるので、青柳恵介『風の男 白州次郎』を早速読んでみる気になりました。世評の高かった北康利による評伝よりもずっと客観的で説得力のあるところが、しっかり両者を引用して比較されています。
また、刑事裁判よりも行政裁判に裁判員制度を導入せよというアイデアは斬新です。思いつきそうで思いつきません。進歩的な行政法学者でもそんなことは言う人はまずいないでしょう。目の付け所が著者らしいと思います(59頁)。実現すると確実に社会が変わるんですけどねえ。
(筑摩書房2010年1,600円+税)
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