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2011年9月26日 (月)

島田裕巳『3種類の日本教 日本人が気づいていない自分の属性』

かつて山本七平が言っていた「日本教」を各論として著者が展開すると、それにはつぎのような3種類の属性があるのだそうです。すなわち、サラリーマン系、自営業・自由業系、公務員・教員系で、それぞれはほとんど異文化のように価値観や行動パターンを異にする、と言われてみれば、確かに腑に落ちるところが少なくありません。

さらに、それぞれの属性に対応する大学は、サラリーマン系が慶応、自営業・自由業系が早稲田、公務員・教員系が東大とのことです。何だか血液型占いあるいは星占いのような話ですが、著者はこうした分析が得意ですね。

先だってもたまたまテレビで著者が長男、長女、二男、二女、一人っ子といった分類を説得的に語っていたのを見たばかりだったので、このレトリックはエンターテインメントの才能の一種かもと思っていたところでした。オウム問題でバッシングを受けたこともあって、今はフリーの著者ですが、この才能があれば大丈夫でしょう。

でも、たんなる思いつきだけではなく、様々な資料やエピソードが丹念に集めてあり、慶応大学については著者自身『慶應三田会—組織とその全貌』(三修社)という本まで出しています。そこではどうやら福沢諭吉が提唱した「社中協力」の理念があのサラリーマン的結束力の淵源になっているそうです。

あの体育会的鉄の団結は東大に対抗するために生まれた習性ではなくて、もっと前からのものだったのですが、福沢本人が言っていたことだったというのは少し残念です。もっとも、本書を読むと福沢自身の属性とその理由がうまく説明されていますが。

いうまでもありませんが、この慶応早稲田東大というのは一種のいわゆる理念型です。しかし、こうして設定してみると、どの大学にもカラーがあって「それはやはり三つの属性のどれかに分類される」(25頁)と著者は言います。なるほど、分類の妙です。

ちなみに、わが国は会社数は人口比世界一(430万社、アメリカでも580万社)ので、今やサラリーマン型が大多数となっていますが、著者はこれが「自分探し」をする若者の増加と関係があるとにらんでいます。というのも、「サラリーマン系は、仕事や職業に関する具体的なイメージを持たないまま成長してくる」(134頁)からだと言います。これもそうかもしれません。

本書の最後に、著者はとりあえず自分がどの属性に属しているかを知ることから始めようと提唱しています。自分の属性に従うのも、あえてそれに逆らって新たな可能性を切り開くのも、どちらもありだと言います。自分を知る人が増えれば本当はかなりの問題が解決するとも言えるでしょう。

ところで、組織も本当はいろんなタイプが混在していなければ、活力も生まれず、アイデアも出てこないんじゃないでしょうか。大学の人間関係を見ていると、特に企業経験のある人が経営に関していつも歯がゆい思いを抱いているようです。何型なのかはにわかにはわかりませんが、とりわけ私学経営ではそういう人の力を活用しない手はないだろうと思います。

でも、残念ながらそれぞれの立場で自分の能力を過信してへ、お互いをバカにしているだけで終わってしまいそうな気がする今日この頃です。1人で何かやれる人はそもそも大学には来ませんしねえ。

(講談社+α新書2008年838円+税)

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