山我哲雄『聖書時代史 旧約篇』
いやー、いい本でした。旧約聖書だけ読んでいてもわからないところがたくさんあるのですが、こうして当時の歴史とつきあわせて考えていくと、腑に落ちる点が結構出てくるものですね。創作部分と史実とが入り交じっているだけになおさらです。
と同時に、謎が深まるところもあります。どんな動機から史実ではありえなかったことを妙にリアルに書くのか、もっと直近の出来事を投影しているのか、願望なのか、何なのかって「エリコの戦い」のことです。ずいぶん時間がずれているそうなので、少なくとも聖書の記述は史実ではありません。壁が崩れ落ちる何百年も前から廃墟だったそうで、ということはかの虐殺も史実ではなかったのでしょうか。
そうすると、レヴィナスがあそこからむしろヒューマニスティックなメッセージを読み取るべきだと言っていたことが、別の説得力を持ってくるような気がしてきます。とにかく、一筋縄ではいかないのがユダヤ思想ですね。
こうやってうまく歴史を整理してくれる本は本当にありがたいです。図版や家系図も理解を助けてくれます。ペルシアの影響が新約聖書成立にもおよびえただろうということも、本書ではっきりわかりました。まあ、状況証拠でしかありませんが、次の新約編も続けて読んでみます。
(岩波現代文庫2003年1240円+税)
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