渡部昇一『報われる努力 無駄になる努力』
古本屋で見つけた10年前の本ですが、若者へのエールというか、人生指南の書なので、「モラトリアム人間」などの時事ネタ以外は古くなっていません。
著者は稀代の読書家なので、いろんなところから引っ張ってくるエピソードは実に面白く、警句も納得が行きます。それで、目にとまった本は大抵買って読むことにしていますが、この本は今まで出ていたことすら知りませんでした。
本書でつい付箋を貼ってしまった箇所から2つほど抜書きしておきます。
「剣道の極意は自分を死んだ人として見ることである、というのがありますけど、同じようなことですね。あと五〇年後には、いずれ死ななければならない。少し早く死しても、何ほどのことがあろうかという心構えでいれば、物事におびえることなく非常によく振る舞えるということなんです」(81頁)
「精神をさわやかにしておく、いかなる場面においても、颯爽とした気分でいる、というのは、人生においては最大の武器になるんです。劣等感に陥りそうなときでも、この態度さえ失わなければ、心配はない」(92頁)
ただ、残念なことに著者は特にこのころの著作では「すべからく」を「すべて」の意味で使っていていて、漢文の知識もある人なのにどうしたことかと訝っています。
たとえば「日本の芸事というのは、すべからくしつけ用にできていますね」(107頁)とか、「中産社会は、すべからく人目を気にする社会構造を持っているんだけど...」(179頁)といった具合です。こういうのって、著者が賴山陽についての著作も出している人だけに、めっちゃ恥ずかしいと思いますが、どうでしょう。
編集も気がついたら指摘してほしいものです。最近の著作ではあまり気がつかなくなったので、どこかで本人ないしは編集者が気がついたのかもしれません。その点でも著者は運の強い人なのでしょう。著者の運を引き寄せる力を学ぶためにも、本書は一読しておくといい本だと思います。これ、皮肉でなく本心からそう思います。
(青春出版社2001年1300円+税)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント