木田元『ハイデガーの思想』
木田元の本は読みやすくて好きですが、ハイデガーの本は今まであまりピンと来たことはありません。ハッタリだらけで、どちらかというと嫌いな思想家に属します。影響を受けた坂田徳男がハイデガー嫌いだったこともあって、食わず嫌いだった時期もあります。その語気を取り直して『存在と時間』なんかもわりと最近読み直してみたのですが、やっぱりダメでした。
ひょっとしてハイデガーは太宰とかランボーとかスタンダールのように、若い頃に読まなければいけないのかもしれません。中年以降に読むと、悪くはないけれど感情移入ができないなあ、という感じになります。
それにしても、木田元さんのような思想読解の名手がハイデガーの思想の読解に一生を捧げられてきたというのは不思議な気がします。さすがにハイデガーの表面的な影響を受けてやたらと難解なことをいう人たちとははっきりと一線を画していますが、やっぱり不思議は不思議です。
そういう興味もあって本書を読んでみたのですが、なるほど本書は題名を裏切ることなく、私でも腑に落ちることが書いてありました。こんな感じです。
「ハイデガーの思想とは、結局何だったのであろうか。私は現代を読むための壮大な思考実験だったと思っている。彼の開いてくれた広大な視野のうちに据えて見ることによって、これまで見えなかった実にさまざまなものが見えるようになった。(中略)知と言語の本質、芸術と技術の本質を考えるための大きな手がかりが与えられ、〈西洋〉と呼ばれる文化圏の運命が、そしてそれに照らし返されて〈日本〉という文化圏の持つ運命も、以前よりいっそう深く読み取れるようになったのである」(230-231頁)
しかし、やっぱり私は今後もあまりハイデガーを読むことはなく、同様の問題を昔から追求していたベルジャーエフやピカート、あるいはウォーコップ、またあるいはわが国の坂田徳男のような思想家を愛し続けることになると思います。
(岩波新書1993年800円+税)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント