« 木田元『木田元の最終講義 反哲学としての哲学』 | トップページ | 青柳恵介『風の男 白州次郎』 »

2011年10月10日 (月)

木田元『新人生論ノート』

いろいろな話題を硬軟取り混ぜて楽しませてくれる人生論です。話題はやはりこれまでおなじみのものですが、名人のいつもの和芸を聴くような感じです。

しかし、リラックスした内容の中にはここまで言い切るかという思われる過激な発言もあり、楽しませてくれます。たとえば、こんな感じです。

「これまで日本の哲学研究者には、肝心なことがあまりよく分かっていなかったのではないかと思えてくる。しかし、大哲学者のプラトンの言うこと、デカルトの言うことがわからないというのは恥ずかしいことだと思い、つい分かったふりをしてしまう。みんながそれをやるので、結局は集団詐欺のようなことになってしまったのではなかろうか。そんなことを言う私にしたって分からないことはわからないと言い出すのにずいぶん勇気が要ったし、ある歳になるまでなかなか言い出せなかった。しかし、言い出してしまうと、いままで分かったふりをしていたことがいかにも滑稽に思えてくるし、かえっていろいろなことが見えてくるものだった」(113頁)

とご自身のことも棚に上げずに述べられていて、好感が持てます。そして、

「見えないものは見えない、分からないことは分からないと認めることこそが、われわれ自身の思索の第一歩だったはずなのに」(115頁)

と結ばれています。これだけ勉強した人ならではのこの発言は、哲学に限らず若い研究者も肝に銘じるべきでしょう。学会の事情は相変わらずのようですけれど。

(集英社新書2005年680円+税)


|

« 木田元『木田元の最終講義 反哲学としての哲学』 | トップページ | 青柳恵介『風の男 白州次郎』 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。