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2011年10月26日 (水)

橋本治『ナインティーズ』

本書の前半は80年代の時評を集めたものでしたが、「PartII 89+1」に入って、話題が世界史や宗教史に広がると猛烈に勢いがついてきます。この疾走感がたまりません。

著者の思想でとりわけ感心したのは、ローマ教皇と天皇制をよく似たものと捉えていることから開ける歴史的展望です。神様の影響から抜け出ようとするときアイデンティティーが問題となるということで、現代の諸問題へとつながっていくのですが、この点で日本の宗教改革を鎌倉仏教に始まり信長〜家康と続く一連の現象と見ているところが新鮮でした。

「そして、江戸時代の日本人たちは『もう十分に自分の頭でものを考えられる』と思ったもんだから、『もう宗教なんかいらないよ』と言ってしまったのに等しい。だから“その後”に困ったんですね。『自分たちはもはや“宗教なんていらない”という段階に達しているんだという自覚がまったくなくなっていたからーそれくらい江戸の“宗教改革”は徹底していたもんだからー宗教の意味が分からない。今に至ってもそうで、宗教の問題が出て来ると『日本人には分からない』で逃げてしまうけれども、『なぜ分からないのか』を少しは考えてみればいいと思う。『日本人は、もうとうの昔に宗教から自由になっていたから』ですよ(165-166頁)。

これは実に面白い見方だと思います。裏付けとなる読書もしっかりとなされていて、なおかつよく考え抜かれています。学者だと読書だけで終わっちゃいそうなところを、著者本人が「考える文体」を獲得していることが大きいですね。

他にも後半の近代市民社会=ファシズム論なんかも説得力があります。あらためて著者の力量に感心させられます。

(河出文庫1994年680円)

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