木田元『木田元の最終講義 反哲学としての哲学』
題名どおりの最終講義と講演、そして補論が収録されています。ほとんどは今までにどこかで読んだ話題なのですが、何度読んでも飽きないところがあります。闇屋から猛勉強して哲学者になった著者の若いころの話はいいですね。語学の習得法も参考になります。
本書では第二章のエルンスト・マッハについての話が強く印象に残りました。マッハからウィトゲンシュタインまでの思想の流れが実に分かりやすく、かつスリリングに書かれています。これを講演ではなくて論文の形になったものがあるといいなと思っていたら、『マッハとニーチェ』という本があったんですね。早速注文しておきます。楽しみが増えました。
巻末の解説は教え子の村岡晋一によるものですが、著者が「本がちゃんと読めるようになれば、人柄がよくなる」という発言をされていたそうで、なるほどなと思いました。これは原書をしっかり訳読する訓練を通じての話ですが、原著者と昔から受け継がれてきた知の連鎖という営みに対する尊敬の念がおのずと湧いてくることで、人間が謙虚になるということを意味しています。
私もそういう読書会をやりたいなと思ってなかなか果たせないでいますが、それはともかくとして、これまでに見てきたあまり人柄がいいとは言えない人たちを見ていると、へんな読み方をしたり、あるいはもうそもそも読書から無縁という人が少ないというのも事実です。
まあ、人のことはともかく、少なくとも自分の問題としては、著者のいう「ちゃんと」した読書をしていきたいと思います。
(角川ソフィア文庫平成20年629円+税)
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