木田元『マッハとニーチェ 世紀転換期思想史』
マッハとニーチェのように一見遠い思想家が、実は同時代の読者にある意味でよく似た影響を与えていたことが、膨大な読書を通じた状況証拠によって固められていくというスリリングな本です。
本書にも引き合いに出されているマッハの研究者ブラックモアさんとは知り合いなので、読んでいて懐かしくなりました。ブラックモアさんはブダペストの精神史にも関心があり、論集を準備中です。私も寄稿していますが、いまだに準備中で、いつ出るのかは不明です。
マッハとニーチェが同時代人に熱心に読まれていたのはブダペストも同じで、ルカーチやポランニー兄弟もそうした空気の中で知的刺激を受けてきました。カール・ポランニーはマッハの『感覚の分析』の抄訳を出版し、解説を書いています。解説は私のホームページの中にも載せてありますので、有志は探してみてください。
本書で新たに教えられたことは、マッハがヒュームの著作を読まないまま同様の思想に到達していたことと、アインシュタインが「オリンピア・アカデミー」という知的サークルでヒュームを読んでいたということです。
また、ゲシュタルトについての論考でその名を知られるエーレンフェルスの多才ぶりや、奇行で有名なフリードリッヒ・アードラーなど、興味深い人物がたくさん登場して、興味が広がりだしたら収拾がつかなくなりそうな感じです。
著者あとがきにもあるように、この時代の精神史は「読まなければならない本、調べなければならないことが多すぎる」(343頁)のですが、本書を手がかりにしながら、私もできるだけ読んでいきたいと思っています。
(新書館2002年2800円+税)
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