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2011年11月30日 (水)

マイケル・ポラニー『創造的想像力』[増補版]慶伊富長=編訳

これもいい本でした。訳文もこなれていて、ポラニーの本にしては読みやすかったです。

本書は科学者や理工系学生に向けての講演や論文を編集し訳出したものです。私個人的には「吸着ポテンシャル理論」などは正確にはどういうことなのかわかりかねるのですが、ポラニーの提起したこの理論が、49年もの間無視されたり忘れられそうになったりしながら、最終的には疑う余地のないものとして確定されるというそのいきさつに科学者共同体の有様が窺われて、興味深く読むことができました。

また「科学と人間」では、西洋の科学主義的世界観が人類の道徳原理と自由の理念をどれほど破壊してきたかということが、これでもかというくらい強調されています。第一級の科学者でありながら、預言者的な使命感に燃える思想家でもあったポラニーらしい論考です。わが国では坂田徳男のスタンスに似ていると感じます。坂田先生はポラニーは読んでいなかったみたいですが。

人間を科学的発見に導くのは未だ見ぬ実在への予感ないしは先見で、それを系統立てて取り出すことはできないとポラニーは繰り返し述べていますが、それが科学の現場でどのようにはたらいているかということについてはそれなりに描写することはできます。124−125頁にそのあたりの事情がうまく述べられています。

科学者が暗黙のうちに個別バラバラな認識を統合させているという知の働きは、社会理論の新たな展開にもつながる可能性を秘めています。ポラニーはそこに理想的社会のあり方を投影させてもいますが、そちらの話については、先日読んだ『科学・信念・社会』や主著『個人的知識』を参照する必要があります。

(ハーベスト社2007年1,800円+税)

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