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2011年11月 6日 (日)

田中成明『法的空間』

ここ数年、手続的正義の問題に関心があって、ちょこちょこ文献を読んできましたが、この問題についてはやはり著者の書くものがもっとも目配りがなされていて、さすがという感じです。本書も後半で民事訴訟理論とのリンクをはかりながら、手続的正義と手続補償の問題が論じられていて、勉強になりました。

実のところ、個人的にはルーマンの手続的正義についての議論について、いろんな論文で著者が反対の立場を取っているところに興味があって、読んできたのですが、本書ではそれがアレクシーの議論に基づくものだと書かれていました(264頁注44)。議論としては説得的ですが、トラをやっつけるのにライオンを持ってくるような感じに見えるので、ちょっと残念です。

国立大学の法学部の先生ですから、あらゆる文献をもれなく検討した上で、議論を展開することが宿命づけられているのでしょう。ご苦労が偲ばれますが、せっかく「対話的合理性」に基づくオリジナルな議論をされているのですから、読者としてはこれまた別の角度からの切り口を期待してしまいました。

もちろんつねに海外ネタを探している研究者向けには、大変ありがたい本です。またそれぞれの大家について学会での精密な読解と議論が深まることが期待されます。うーん、それにしても私のような不真面目な会員はますます足が遠のいてしまいます。

まあ、著者の場合、理論は理論でいいとして、実務を多少理想化しすぎるきらいもあるので、私としては実務にも詳しく、裁判の当事者にまでなって理論を模索している行政法の阿部泰隆さんのような人が書くものが、一番参考になります。法哲学の研究者があまり注目していないのはもったいないなあといつも思っています。それについてはまた別に書くことにします。

(東京大学出版会1993年6000円+税)

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