木田元『現象学』
現象学は私が学生の頃結構ブームでしたが、その当時本書を読んでいなかったのは、もったいないことでした。でもまあ、今読んだのだから、一生読まないでいたことにはならなかったということで、よしとしておきます。
本書は現象学をフッサール、ハイデガー、サルトル、メルロ=ポンティ、ときにはルカーチなどにも言及しつつ各思想家の視点から多角的に解説した本です。著者によれば、現象学の一番面白い部分はフッサールにもあったものの、やはりハイデガーの存在論とリンクするところにあると、明確には言っていませんが、確信されています。
ハイデガーによる存在=生成の現象学がある意味で虚焦点のような役割を果たしています。一番評価が低いのはサルトルのそれで、確かにかつての哲学のスターは時間がたってみると、メルロ=ポンティより数段レベルの低い思想家だったことがわかりますが、本書での位置づけもまあそんな感じです。メルロ=ポンティの思想と本書で引用されている文体はなかなか魅力的なので、これから何冊か読んでみるつもりです。
本書できっちりと捉えられた現象学のエッセンスは、後に著者が見出すマッハの思想とのつながりが自然に予想されます。著者の読解が正確で正当なものだということが、こうして古い本を読み返してみても明らかに示されているのは、すごいことだと思います。おっちょこちょいであとから絶版にするだけでなく、回収して燃やしたくなるような本を書いているなんちゃって教授や評論家は結構いますから。
(岩波新書1970年720円+税)
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