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2011年12月19日 (月)

西加奈子『漁港の肉子ちゃん』

久々にとんでもなく素晴らしい小説を読みました。西加奈子はもう私の中では荷風や太宰よりも上位にランクされる小説家になってしまいました。彼女の小説世界の奥行きの深さには心底驚かされます。

いつものようにストーリーもきっちり練られていて、泣かせるところも心得ています。涙腺が弱い人はちゃんと大きなハンカチを用意して読んだほうがいいでしょう。

また、タイトルの「肉子ちゃん」ですが、これくらい美しくない登場人物は他にないんじゃないかというキャラクターです。少女のお母さんなのですが、すごいです。映画化されるとしたらどんな女優さんがいいでしょう。太っていて不細工で、人を信じやすくて騙されやすく、いつもとても明るいお母さんです。演じ甲斐のある役だと思います。

なお、細かいところですが、物語の中ほどのところで主人公の少女自身が成長して、ものの見方が変わることで、亀裂の入った人間関係が修復するところは、地味ですけれど新鮮な驚きがありました。こういうのって定点観測しがちな作家の目が足かせになって、結構難しいことのように思います。

小説家といえば、荷風や太宰はともかくとして、社会の底辺の人びとを結構ストレートに書いたフランスのセリーヌなんていう世界的な作家がいましたが、正直いって、西加奈子のほうがもっと鋭く深く、暖かい作品世界を作っていると思います。

あとがきによると、地震の前の石巻や女川を旅行したときに着想された作品だそうです。さ作品の中では舞台は北陸の漁港ということに変わってしまいましたが、地震の後もいろんな思いを抱きながら書き続けてくれたことで、こんなに素晴らしい作品が日の目を見ることになったのは、慶賀すべきことだと思います。

できるだけ多くの人に(それも多くの女性に)読んでほしい小説です。

(幻冬舎2011年1400円+税)

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