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2011年12月 5日 (月)

ダニエル・カーネマン『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』友野典男・山内あゆ子訳

行動経済学の本を開くと、必ずこのカーネマンとトヴェルスキーによる実験が載っていますが、本書にはそのカーネマンのノーベル賞受賞記念講演や自伝ならびに二つの論文が収録されています。

その中でもとりわけ自伝は読み応えがあります。トヴェルスキーとの共同研究がカーネマンにとってどれほど楽しくスリリングだったかということがわかります。子どもが仲のいい友人と時間を忘れて遊びに熱中しているという感じでしょうか。これを研究として寝食を忘れるほど集中してやるというのはすごいですね。

また、この経済学の業界じゃなかった学会は、かなり悪意に満ちた批判が飛び交う場所のようで、二人があらゆる嫌がらせの質問にも対応するべく作戦を練るところが印象に残りました。ちょっと日本の学会とは違う感じがします。悪意や嫉妬を抱く人なら同じくらいいるのでしょうけれど、そこまで露骨に出すのはやはり文化の違いでしょうね。

それはそうと、行動経済学の実験例は授業に使うと効果的なので、本書からもまたいくつか拝借して楽しい授業にしたいと思っています。本書は予備知識がなくても読めますので、行動経済学って何?と思っている人にもお勧めです(でも、もっとお勧めなのは本書の監訳者友野典男さんの『行動経済学」[光文社新書]です)。

行動経済学は人間の非合理性を実証しようとしているのではなくて、「いついかなる場合も完璧な合理性があるという非現実的な概念に異議を唱える」(106頁)ためにあるといいます。そう言いながら、行動経済学は人間の愚かさのパターンを俎上に乗せるので、一部のきまじめな人の神経を逆なでしているのかもしれません。しかし、それは回り回って人間の賢さの追求へとつながる議論だと思いますけどねえ。

なお、翻訳は日本語としてよくこなれていて読みやすいです。これだけストレスを感じずに読める翻訳書はそうはありません。

(楽工社2011年1900円+税)

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