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2011年12月 3日 (土)

池田信夫『イノベーションとは何か』

イノベーションはちょっとあるいはかなりクレイジーな才能が生み出すもので、大げさに言えば世界を変えるほどの力を持つ商品のことです。最近亡くなったジョブズが開発したiPhoneやiPadのように新たな需要を呼び起こす商品がいい例です。

あんなものがなくても生きて行けるのに、ないと寂しくてどこかすさんだ気持ちになるようなモノです。イノベーションはソフトウェアでもいいわけですから、本質的には情報といえるかもしれません。いずれにしても日本人の得意なモノづくりとは根本的に違った発想から出てきます。

本書はイノベーションをめぐる経済的な諸問題を見事に整理したもので、理論的にもM.ポランニーやハイエクを援用しながらきっちり固められています。要するに、パラダイムを変える力を持つ発明・発見はどうして生まれるかということですね。そしてそれは、自由な精神活動から生まれるのです。

もちろんそんなイノベーションはそうそう起こるものではなくて、成功事例を見てみても、10のうち1でも当たれば大変なっことだといういことになります。ソフトバンクなんかは幸運が味方したほとんどまぐれ当たりという評価にすらなります(168頁)。

マイクロソフトやアップル、任天堂やグーグルのような代表的な企業の分析も見事で、いろいろと参考になります。参考っていうのは大学経営のことですが、これもイノベーション次第でこの閉塞状況を打開できるのではないかと思うからです。

ただ、そう思って読んでいると、こんなくだりが目にとまりました。

「日本企業が優秀な人材とすぐれた要素技術をもちながらイノベーションを生めないのは、過剰に空気を読むコンセンサス型の企業文化がフレーム転換を阻害し、初期のうちにあきらめる擬陰性を生み出しているためだ」(207頁)

大学にはさほどすぐれた要素技術はありませんが、その他は同じ問題を抱えています。変人はそれなりにいますが、イノベーションを生み出せるほどの変人はやっぱり大学を極めて不自由なところと感じますので、やっぱりいられませんし、大学も一割打者を飼っておく度量はないでしょう。他方で、サラリーマン教員はといえば、今度はあまりにも従順すぎてトップに過剰忠誠を尽くし、自由の阻害要因になります。

というわけで、大学に関しては「こりゃダメだわ」というのが正直な感想ですが、おそらくこれからは民間企業で頭の柔らかいところは自由な社風でイノベーションを誘発しようとすると思います。そんなところしか生き残っていけないとなれば、そう動くような気がします。

大学はもはや賞味期限が切れています。やっぱ私塾の時代かもしれないですね。

(東洋経済新報社2011年2000円+税)

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