ひろさちや『「狂い」のすすめ』
いい本です。世間のしがらみにとらえられているときに読むと、心が軽くなります。閑吟集に「一期は夢よ たゞ狂へ」とあるあの狂いの勧めです。世間の生真面目な価値観が押しつけてくる重圧に負けないようにするには自分から「狂ってみせる」ことが必要だと著者は言います。
一休禅師のようにスマートあるいは酔狂な真似はできなくても、心に遊びの部分やちょっとしたゆとりを持つことで、テキトーに生きていくのが世の中の価値観ではなくて、仏教やキリスト教に共通する弱者の知恵だというわけです。
いいですね、こういうの。仏教は要するに「こだわるな」という教えだと、ほかならぬ著者の本に書かれていたと思いますが、その実践編です。勤め先でもついつい肩に力が入ってしまう毎日ですが、ときどき本書をパラパラとめくるようにするといいかもしれません。
「ともかく、世間の物差し一本で生きてはいけません」(182頁)と著者は言います。そうですよね。ただ、そうはいっても私自身ちょこちょことしがらみを抱えてもいるので、これからすこしずつ自分なりの「狂い」の戦略を考えたいと思います。もっとも、すでに十分狂っているのかも知れませんが。
(集英社新書2007年680円+税)
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