テンニエス『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』(上)(下)杉乃原寿一訳
現在執筆中の社会学教科書関連で、本書も30年ぶりくらいに読み返してみました。社会を二つの類型に分けて論じるというアプローチでは代表的な本です。
アイデアとしては、H.S.メインの『古代法』の「身分から契約へ」に触発されたものと思われます。デュルケームと違ってそのあたり正直に言及していて好感が持てます。マルクスの影響も強いですね。旧社会主義圏でも重要文献の一つとして読まれ続けていた理由がわかります。
ゲマインシャフトはムラ社会、ゲゼルシャフトは会社とでも考えるとわかりやすくなりますが、補足や注にゲノッセンシャフトという協同組合的組織が登場して、ちょっと興味を引かれます。あるべき社会形態の第3の可能性を考えていた節がうかがえます。
著者は真面目に様々な話題を一つ一つ採り上げ、それぞれに自分の概念を適用して説明してくれていますが、論じ方は平板で、それだけでお腹いっぱいになるところがあります。本書の美点はやはりキャッチフレーズのうまさでしょう。タイトルにもなっている二分法だけでも想像力を刺激された社会学者が後にわんさと登場して、社会学の公務員試験受験参考書などでは、似たようなパターンの暗記項目が表になって整理されていたりします。
それにしても、わが国のように会社がムラ社会のようになっていたりするのは(ムラ社会が会社になったのでしょうけれど)世界的にも例がないのではないでしょうか。テンニースが見たらびっくりでしょうけれど、これもそろそろいい加減にしてほしいものです。しかし、多くの日本人にとってムラ社会はやはり安住の地なのでしょうね。なかなか変わるのは難しそうです。
(岩波文庫1950年各400円)
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