橘玲『亜玖夢博士の経済入門』
行動経済学や社会心理学、あるいはネットワーク理論といった先端科学の理論がそれぞれ5つの短編小説になっています。学問フリークの博士と秘書の中国人女性にその弟の助手が、どれも濃いキャラクターで怪しい世界を作り出しています。
それぞれの理論がしっかり理解されていないと、こんなにうまく小説世界とリンクできないと思います。また、小説ならではのスピーディーで極端な展開が、これまた理論モデルを際立たせています。並の才能と努力では書けない本だと思います。
私が現在執筆中の社会学の教科書もこんなふうに書けたらいいでしょうけれど、なかなかそうはいきません。それでも今後少しは参考にしてみたいと思います。少なくとも、何をどう書いても自由だということを示して見せてくれるのはありがたいです。
そうそう、経済学の教科書としても十分使える本ですよ。教える方の力量が問われるのはつらいですが。
なにはともあれ、本書には勝手に勇気づけられる思いがしています。
(文春文庫2010年524円+税)
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