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2012年2月15日 (水)

ひろさちや『けちのすすめ 仏教が教える小欲知足』

ここ数日入院していたときに読んだほんの一つです。入院中に読むのに最適の内容です。病気の多くがストレスから来るので、本書の不安の解消法は役に立ちます。実は解消というより「飼いならす」ことなんですね。

「むしろ今の不安を、わが身の欲望から出た錆と考え、その不安を飼いならすことができる哲学を持つことが何より大事」(13頁)

そうですよね。こういうときに副題にある「小欲知足」が生きてきます。欲望を小さくすることで不安も小さくなるということです。

で、欲望を小さくすると、人によく見られたい気持ちもなくなり、世間体の多くから背を向けた生活をすることになるので、それが「けち」ということになるわけです。タイトルは一見人を驚かすようなところがあっても、理にかなっています。その点ではないようも含めて、前著『「狂い」のすすめ』の続編みたいな感じです。

しかし、資本主義経済の底知れぬ欲望のシステムや、日本社会の原型思考などのよく観察され考え抜かれた指摘は見事です。続編といっても二番煎じではありません。

特に日本人の原型思考では「お隣さんはいないと困るけど、嫌なやつ」というかたちで、「意地悪じいさん」としての隣人をとらえています。

「つまり、日本人には、もともと[ヨーロッパのような]労働者の連帯意識はないのです」(104頁)

なるほど農耕社会っぽい今の職場を見ても、思い当たるフシがあります。また、アメリカははぐれものが集まった国なので、こうした連帯意識はありません。そこで、

「いっそのこと労働者をなくしてしまえと、労働者を消費者に変えていったのが、アメリカ型資本主義です」(105頁)

これが日本に上陸して「怪物へと姿を変えていった」のが今の日本ということになります。詳しくは本書をどうぞ。

行き着くところまで行き着いてしまったら、著者の言うようにわれわれはみんな「けち」で行くしかなさそうです。

もうひとつストレスの原因となってくる人間関係については、著者は仏教の「縁」の考え方を紹介してくれます。私たちに「今の生き方で自分の人生を行くっていいんだよ」と許してくれると同時に、嫌なやつもひどいやつのありかたも仏様がお許しになっていることですから、「あなたが他人の心を変えることはできない」(188頁)と考えることです。

そうすると、他人に対して余計なこともいわなくなり、「いい意味で無関心でいられる」(189頁)ようになるといいます。

これでかなりストレスが軽減されるといいなあ。しかし、どうだか。やっぱりわが身を振り返っても愚かだからなあ。

でも、本書によってちょっとでも心が軽くなるといいですよね。

(朝日新聞出版2009年1200円+税)

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