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2012年3月18日 (日)

レヴィ=ストロース『野生の思考』大橋保夫訳

以前本書を読んだときは、ショムロー・ボードグの『原始社会の財貨交通』を翻訳する際の訳語の参考にするためだったので、結構適当な読み方をしていたようです。今回読み直してみて、あらためてレヴィ=ストロースの強靱な知性に驚かされました。

レヴィ=ストロースは理数系に強いタイプの頭なので、未開社会の複雑な社会構造を前にして、たじろぐどころかむしろ嬉々としてそこに規則性を見出そうとする人なのでした。彼が見出す「構造」というのはこんな感じです。

「私は『実践』と慣習的行動の間にはつねに媒介項があると信じている。その媒介項が概念の図式なのであって、その操作によって、互いに独立しては存在しえない物質がと形態が、構造として、すなわち経験的でかつ解明可能な存在として実現されるのである。私は、マルクスがほんの少し素描をしただけのこの上部構造の理論の確立に貢献したいと思っている」(154頁)

うまいこと言ってくれますね。でも、この見通しを明るく信じているところがレヴィ=ストロースの特徴です。説明が図式的すぎるような気がすることもありますが、実際に現象が本当に図式的だったりすることはありますし、そう見えていることとそうあることとを繋ぐためのもっとも妥当な近似値モデルはやはり構造なのかもしれません。そもそも私たちの頭が構造的ですから。

というわけで、当時の論敵であった、論壇の寵児サルトルは、ほとんどレヴィ=ストロースによって理論的にはとどめを刺されていたんじゃないかという気がします。

ところで、レヴィ=ストロースが嬉々として取り組むトーテミズムや親族体系の諸問題は、確かに固有かつ独特の論理で動いていて、興味深い対象なのですが、わが国のように原始心性を色濃く残している文化の場合、レヴィ=ストロースが驚いたように驚く必要もない場合があります。

忌み名や名前の剥奪、奪還をはじめ、いろいろと出てくる怪しいモチーフは宮崎アニメや『夏目友人帳』とか『蟲師』の世界に息づいています。少なくともわれわれは西洋のインテリのように驚いてみせる必要はなさそうです。

完訳された『悲しき熱帯』も近いうちに読んでみます。

(みすず書房1976年3600円+税)

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