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2012年3月 2日 (金)

後藤正治『清冽 詩人茨木のり子の肖像』

茨木のり子の詩は若い時あまりぴんと来なかったので、それなりけりになっていましたが、本書に引用してある作品を読んでみると、丁寧に選びぬかれた言葉が用いられていて心を動かされました。言葉に対する姿勢が一貫して見事です。

私の場合、若い時には狂気の一歩手前にあるような難解な詩をよしとしていたので、この詩人の味わいが余計わからなかったのだと思います。

そのあたりのことは谷川俊太郎がうまく書いています。

「茨城産は一貫して自分と向き合い、きちんと書いてきた詩人ですよね。社会とも向き合ってきた。それは彼女の美質だけれども、表現されるものもまた行儀がよくて、パブリック過ぎるというか、へたをすると教訓的になってしまう。僕の言い方でいえば言葉を生み出す源の無意識下がきれい過ぎる。そこが物足りない」。(123頁)

もちろん著者の作風も晩年にはかなり変化してきていて、そのあたりの事情も本書は丹念に描いています。2007年に刊行された『歳月』は、その谷川俊太郎も称賛しているので、これはやっぱり読んで見る必要がありそうです。

著者の文章は読みやすく、叙述の構成も絶妙です。何より著者がこの詩人の作品と人となりに惚れ込んでいるのがよく伝わってきて、好感が持てます。いい本です。いつか娘に読ませたい本です。

(中央公論社2010年1900円+税)

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