生松敬三・木田元『現代哲学の岐路 理性の運命』
稀代の読書家の二人が、ポストモダンの思想家に至るまでの西洋近代哲学の歴史を自在に語った本です。いろんな思想家たちの思想史的こぼれ話も面白いですし、特に木田元さんの発言が自由闊達でいい感じです。
いろいろと教えられたことがたくさんある本ですので、以下に箇条書きにしておきます。まあ、自分のための覚え書きですが。
・マルクスの発想の核心に「根源的自然」の復権という一種ロマンは的な発想があること
・ゲシュタルト心理学とゲーテの発想との共通性
・ルカーチの『歴史と階級意識』の斬新なマルクス解釈の確かさが、後に発見されたマルクスの『経済学・哲学手稿』によって裏付けられたこと
・フランス思想がドイツ哲学を吸収し始めた1930年代の思想状況
・ウィトゲンシュタインはフッサールの『論理学研究』をはっきりと意識して、それを乗り越えようとしていたこと
・ポストモダンの思想が単なる非合理主義や土着性の強調に堕する心配があること
・オルテガの「生のための理性」という発想の面白さ
などです。生松敬三は思想史的アプローチなので、あっさりした読み方をすることが多いのですが、その分、いろんなエピソードに通じています。木田元は英独仏ラテンギリシャの5カ国語に通じ、しっかり原典で読みこなした上で、決して西洋崇拝にならずに、健全な日本のおじさん的読解を提示してくれます。タイプの違う博学同士の対話がうまくかみ合って、話題がどんどんふくらんでいきます。これで面白くならないわけがありません。
(講談社学術文庫1996年800円+税)
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