蛇蔵&海野凪子『日本人の知らない日本語3 祝!卒業編』
3作目になって、そろそろネタ切れかと思いましたが、そんなことはありませんでした。前作に劣らないよう、いっそうの取材と工夫を重ねて面白く読ませてくれます。
また、難読漢字や間違いやすい語法などは、前2作同様勉強になります。「すべからく」の使いかたなんかもちゃんと書かれています。
おなじみの生徒たちが本巻で卒業したあとも、海外の日本語教育事情を取材したシリーズ第4作が予定されていて、一部が巻末袋とじで予告されています。
それにしても、世界各国から学生が集まる首都圏の日本語学校は、異文化コミュニケーションの生きた題材に満ちていますね。私が仕事で10年関わってきた大学の留学生別科は中国人学生がほとんどだったので、驚くことは無数にありましたが、ここまで笑いに満ちてはいなかったのがちょっと残念です。
日本のアニメや時代劇、あるいは任侠映画をはじめ、様々なサブカルチャーに惚れ込んでいる人の割合は、わざわざ欧米からやってくる留学生と比べると、中国人留学生は圧倒的に少ないですし、日本の文化や歴史に興味を持つ学生はなおさら少ないのが実情です。
ただ、やはりこれまで日本語が飛躍的に上達した中国人留学生は皆、アニメやマンガやジュニア小説やミステリーの読者でした。宮崎アニメなどを繰り返して観ていた留学生は、日本に到着する前から自然なイントネーションが身についていて、日本語能力試験も1級に合格してしまっていましたし、小説大好き留学生は抜群の語彙力と読解力を持っていました。
サブカルチャーの効果にはおそるべきものがあります。お勉強という感じがしないまま、作品世界に引き込まれるからいいのでしょう。外国語の習得は、結局はどれだけ時間をかけるかに比例しますが、時間を忘れるくらい没頭するのが理想ですからね。
それにしても、卒業式で学生たちから「先生、大きなお世話になりました」なんて言われてみたいものです。それが冗談だったらもっと嬉しいですけど。
それから、本シリーズがきっかけで日本語教師を目指す人が増えて、うちの短大通信教育部に入学してくれる人が増えると、もっと嬉しいです。
海外編も楽しみです。
(メディアファクトリー2012年880円税別)
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