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2012年4月 9日 (月)

『中公バックス 世界の名著68 マンハイム オルテガ』

マンハイムの『イデオロギーとユートピア』を再読。いろいろな論点を総花的にあげながら、収拾をつけるのがあまり得意でない人です。目の付け所はいい人だけに、ちょっと残念な本。

1891年生まれのマンハイムは先輩にルカーチがいて、助言者というか批判者にウェーバーがいて、本当に書きにくかったことだろうと思います。有名な「存在拘束性概念」などは、マルクスの影響もしっかり受けながら、それを乗り越えようとして苦闘していますが、ウェーバーのエピゴーネンとは見られたくなかったでしょうし。

それでも、第3部の「ユートピア意識」の中での千年王国運動への着目なんかはやはりたいしたものだと思います。人間の無意識のエネルギーへの着眼が光っています。例えば農民戦争について、

「人びとを存在を破壊する講堂へ駆りたてたのは『理念』ではなかった。はるかに深く自然の生命に根をおろした、はるかに暗く見定めがたいこころの深みが、ここで爆発を起こしたのである」(332頁)

「いったんわれわれが無意識の動機について認識した暁には、かつてそれらについて無知だった時代にやっていたのと同じやり方で生活を続けてゆくことは不可能だ」(144頁)

こんなところは面白いですね。ただ、いろんな大家の思想とそれぞれのアイデアがうまく接合できずに苦しんでいる感じがして、ちょっと気の毒な気がします。そのあたりに哀愁を感じるファンもいるのかもしれませんが、同じ巻のオルテガの堂々とした攻撃的な感じとは対照的です。

この点でも絶妙な組み合わせの中公バックスです。
翻訳は読みやすいです。

(中央公論社昭和54年1200円)

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