米原万里『魔女の1ダース』
比較文化論の名著です。言語と文化の違いが生み出す笑いが満載です。しかし、笑ってばっかりでなくて、ときにはへぇーっと感心させられるような思索と、驚くべき事実の指摘が含まれています。
ロンブ・カトーのような言語の達人たちの頭の中に「明らかにいずれかの原語で表現される前に、どの原語にも依存しないような一種の概念の存在」(57頁)を認めるところとか、ポルポト派の支配するカンボジアで「美しい女性は、ベトナム人に違いないと疑われて、片っ端から連れ去られて惨殺された」(84頁)といった事実を指摘しているところです。
1964年頃の中ソ対立とグヤーシュ論争の話は勉強になりますし、ベトナム人とソ連税関の駆け引きや、マルボロが通過になっていた闇経済のあり方なども似たような事例を目にしたり経験したりしたことがあるので、身につまされてわかるところがあります。ジプシーの子どもは迷子にならないという話も面白かったです。
もちろん著者お得意の艶笑小咄や排泄物をめぐる比較言語文化論も健在です。感想を書くたびに同じ事を言いますが、もっと著者の書くものを読みたかったですね。これで、あと1冊を残してほとんど読んだことになりそうです。若くしてお亡くなりになったのがつくづく残念です。
(新潮文庫平成12年476円+税)
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