トクヴィル『アメリカのデモクラシー』第1巻(上)(下)松本礼二訳
長い間読まなきゃと思いつつ放っておいた本ですが、ようやく読みました。まだ後下巻上下の2冊ありますが、ここまでで気がついたことをまとめておきます。
ミュージカル映画に「パリのアメリカ人」というのがありますが、アメリカのフランス人といいましょうか、歴史と伝統の重荷を背負ったフランスの知識人から見たアメリカ論です。フランス人の目に映るアメリカというのはもうほとんど異文化を見ているような感じですが、それがまた日本人の目には新鮮に映ります。
トクヴィルはアメリカが、宗教を基礎にした平等と自由を上手くミックスさせ、民主制社会を形成していると見ています。王や貴族が存在せず、平民が自分たちで意見調整しながら新たな活力ある国家を作りつつあることを活写しています。
アメリカにはヨーロッパ大陸にある意味での「行政」や「統治」というものが存在しないことと、その代わりに法の支配を徹底させていることがうまくとらえられています。公務員の社会的評価が低く、相対的に給料も安いというのは現代でもまだ生きています。アメリカの公務員は最低賃金ですもんね。
ヨーロッパでは教養もある貴族が役人を務めることが多かったこともあって、それが利権獲得と保身に汲々とする役人天国を生み出しがちだったこともしっかり指摘されています(この点、同じ役人天国のわが国も同じですが、貴族ではなくて学校秀才ですが)。アメリカのやり方は役人にお金も過大な権力も持たせないことで、結果として民間の活力を最大限活かす世の中を形成することに役立っているようです。これは良い知恵です。トクヴィルは言います。
「民主政治は国民にもっとも有能な政府を提供するものではない。だがそれは、もとも有能な政府がしばしば作りだしえぬものをもたらす。社会全体に倦むことのない活動力、溢れるばかりの力とエネルギーを行き渡らせるのである。こうした活力は民主政治なしに決して存在せず、それこそが、少しでも環境に恵まれれば、驚くべき成果を生む可能性をもっている。この点にこそ民主主義の真の利点がある」(下)136頁
他にも昔から大統領選挙に熱中する国民の様子や、何かにつけて法律的議論で決着を図ろうとする思考=行動パターン、あるいはヨーロッパでは恥とされるような露骨な拝金思想など、今も変わらないアメリカ的要素がうまくとらえられています。比較文化論の名著ですね。
要するにアメリカは大きな島国なのかも、と考えたりしますが、このことについては2巻上下について書くときに触れたいと思います。
(岩波文庫2005年上巻900円+税、下巻940円+税)
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