竹田青嗣『哲学ってなんだ 自分と社会を知る』
著者は30歳を過ぎるまで哲学がよくわからなかったそうです。物心ついたときから自分にわからないものはなかったような顔をしているニューアカ以降のインテリと違って、正直で好感が持てます。著者にはフッサールがピンと来た最初の哲学者だったそうですが、そうして1人がわかると芋づる式に読み解けてくるのがこの世界の特徴かも知れません。
哲学は自分の中に切実な欲求があって初めてわかるような分野ですので、こういうことを隠さず書いてくれる人には共感できます。思えば、私の場合はウォーコップ『ものの考え方』(深瀬基寛訳、講談社学術文庫)が死ぬほど読み返した最初の哲学書でした。
著者は哲学を〈概念を論理的に用いることで世界を説明しようとするゲーム〉ととらえています(30頁)。ゲームなんて、ウィトゲンシュタインの影響かなあと思いもしますが、近代哲学を批判する流行の立場ではなくて、むしろその擁護派であるところが特徴的です。
個人の自由を追求する近代哲学が出てこない限り、その自覚はありえなかったからで、自由とそれを実現する社会との折り合いの付け方、あるいは社会のつくりかたを意識するのは、その自覚の後の話だからです。
著者は「哲学は深くよく生きるための思考の優れた方法なのである」(199頁)と言います。今どきのスカした知識人たちの中で、正面切ってこんなことを言う人は立派だと思います。
なお、本書はジュニア新書ですが、全然易しくはありません。言葉の用い方も手加減していませんが、気持ちは通じるかも知れません。そちらの方が大事なことですけどね。ただ、先哲の言葉が巻末にまとめてありますが、これはむしろ適宜本文に織り込んで論じてもらうとありがたかったなと思います。先人の言葉とゆっくり対話するというスタイルのほうが、説得力があると思うからです。
それから、著者が近代哲学を神からまったく切り離して論じてしまうところは、ちょっと問題かと思います。カントもヘーゲルも熱心なクリスチャンだったことがその哲学の背景にあるので、そのあたりは慎重を期することで、よりふくらみのある内容になりえる場所だからです。
しかし、全体的に、読みやすいいい本でした。中高生は本書をどう読むでしょうね。興味があります。
(岩波ジュニア新書2002年740円+税)
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