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2012年5月 3日 (木)

村上重良『世界の宗教』

ジュニア新書ですが、子ども用に手加減されてはいません。世界の三大宗教だけでなく、代表的な宗教はほとんど言及されています。講談社学術文庫の『日本の宗教事典』(品切れ)は名著でしたが、字が小さくて読みづらいのが難点です。世界の宗教事典へと進む前にネットで注文した本がこれでした。届いてからジュニア新書だったとわかりましたが、後悔することはありませんでした。

わが国は今日なお自称「無宗教」実は排他的「日本教」というか「やまと教」の信者が多数派なので、世界の宗教についての基礎知識が一般教養として共有されないままです。本書が高校の歴史副読本として広く読まれるといいのですが。

本書では世界各地の古代の諸宗教から始まって、三大宗教の成立史とその概要がコンパクトにまとめられています。古代エジプトの神々や古代ペルシアのゾロアスター教、ヴェーダ時代のインドの宗教、古代ギリシアのデュオニソス信仰やデメテル信仰、紀元前三世紀にローマで広がったミトラ崇拝などが世界史の流れのなかできっちりと解説されています。

古代ヨーロッパや中南米、アジアの諸宗教にも十分目配りされたのち、仏教、儒教、道教それからユダヤ教、キリスト教、イスラム教についての成立史と基本的教義が解説されます。そこでもジャイナ教やコプト教やシク教のようなそれらから派生したマイナーな宗教にも言及されていて、勉強になります。

所々で結構トリビアな知識も解説されていて、決して無味乾燥ではありません。ヤヌスは門扉の神さまだとか、エレミヤは捕らえられたけれども許されてエジプトに逃れたとか(逆さづりにされて泥の井戸の中につけられたりしていたので、私の記憶の中では死んだことになっていました)です。

著者の公平な視点は次の記述からも明らかです。

「世界の宗教がそれぞれつくりだしてきた思想と文化は、その宗教を信じている人びとだけのものではなく、人類共有の財産です。それだけに、宗教を信じている人も、信じていない人も、信教の自由を大切にし、すぐれた宗教文化を受けついで発展させてほしいと思います」(224頁)

今年から大学の比較文化論の副読本にも指定しておきたいと思います。

(岩波書店2009年改版780円+税)

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