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2012年6月25日 (月)

漆原友紀『蟲師』1〜10

動植物と無機物の間にあるような、自然の畏るべき力を象徴する存在を「蟲」(むし)として造形したところが見事です。その蟲を退治するのではなくて、敬意を払いつつ共存しようとする姿勢が日本人の伝統的自然観につながります。

物語は能の作品構成に似て、旅の僧ではありませんが、エピソードごとに蟲にまつわるトラブルに対処する主人公の、ギンコという放浪する「蟲師」が出てきて、正体を現した蟲を鎮めて去っていきます。自然の怖さも美しさも実に上手く物語の中に配置されています。

能に似ているということで言えば、かの世阿弥も室町時代にこういう(今よりもリアリティのある)異界との狭間から発想していた一面があったんだろうな、という気がします。

ところで、これを原作にしたアニメがまた素晴らしくて、実はもともとそちらを先に観たのがきっかけで、本書を購入したのですが、こうして読んでみるとアニメは見事に原作に忠実な作りになっています。忠実だからこそ、見事に原作のよさを引き出しているんですね。7巻のあとがきに著者はこう述べています。

「さて、アニメの『蟲師』ご覧になりましたか? お話が命をもって動き出しています。色彩と動きと音。原作にないもの全てを補ってあまりあるものにして頂いています! 未見の方はぜひ一度!」

まったく、その通りです。もちろん原作あってこその世界なのですが、原作への愛が素晴らしいアニメを生み出しました。この制作スタッフのセンスと技術水準の高さは特筆すべきです。これはそのうちお金を貯めて、DVD box を買うはめになりそうです。

(講談社2000年〜2008年562円〜590円税別)

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