群ようこ『またたび読書録』
著者の一連の読書エッセイで、本書は未読だったことに気がついて、慌てて読みました。慌てる必要はないのですが、いつも読者をしませてくれるうえに、新たに本を紹介してくれますので、お得感があります。
本書で紹介された本の中では特に、おちことよ/平野恵理子『生活図鑑』を手元においておきたいと思いました。家事全般についての必要にして十分な知識が一覧できるとのこと、便利そうです。
それぞれの章の構成は、いつものように身の回りの出来事などについてのエッセーに始まって、後半でそのエッセーの内容に付かず離れずの絶妙な距離感を保ちながら、テーマとする本の紹介に入っていきます。エッセーの中に気に入った文章があったので、そのうちのいくつかをここで紹介しておきます。
西原理恵子『ぼくんち』の章ではこうです。
「ずっとワルを続ける人間は愚かだが、ある一時期でも多少、悪いことをしたほうが、人間的ではないだろうか。私は清く正しく生きてきた人には魅力を感じない。多くの人は他人とぶつかり合うことを恐れ、すまし顔で暮らしていこうとする。これはとても悲しいことだ。私は『ぼくんち』を読んで、これから先、この本を心において、行きていこうと思ったのである」(20-21頁)
ホッファーの『波止場日記』の章では次の通り。
「頭だけ使ってきた人々の、いちばん困るところは、変なプライドを持っていることである。
『何といわれたって、偏差値はものすごくよかったんだから』
というのが根強く残っている。ただそれだけによりどころを見つけているといってもいい。そして素直じゃない。もちろんお勉強ばかりしてきた人が、みんなそういうタイプではないが、
「あの学校を出ていて、あんた、その程度の人間なわけ」
といいたくなる人が、あまりにも多すぎるのだ。
間違ったことをしたら、素直にあやまる。これが人間の基本である。ところが小賢しい人々はあやまるのが嫌いなようで、ああだこうだといいわけがましいことばかりいって、
『ごめんなさい』
とあやまれない。なんとか自分の身を取り繕おうと必死になる」(82-83頁)
いやー、私もこういう人をたくさん見てきましたし、今も毎日のように見ているだけに、「ホントにそうだよね」と思わされます。学校歴自慢の人は話して3分もすると、自分の出た学校の話題に持って行こうとしますし、読んでない本も読んだようなことを言うし、自己の能力を超えた責任ある立場に就きたがるのに、責任だけはとろうとしません。
それでいて、騙しの点ではもっと上手のヘンな業者によく引っかかるんです。その道のプロからすると、彼ら彼女らはプライドをちょっとくすぐるだけで、すぐ契約してくれるから、カモがネギ背負ってやってきてくれると思っていることでしょう。
それでもって、下々には「私は間違っていない」って言い張るんです。こういうときの利害関係者はあっという間につるんで、口拭ってますからねえ。官僚顔負けの小賢しさです。下々にはとっくにバレてんのにねえ。
(新潮文庫平成13年438円税別)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント