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2012年6月28日 (木)

竹内洋『大学の下流化』

教育史の視点から大学を見ると、当然ながら本書のタイトルのようになりますね。今日では、一流と言われる大学の学生でも、ほとんど本を読まず、新聞もとらないので、そう言われても仕方ありません。

本書では、どういう歴史的経緯で学生が変質していったかということが、明治時代にさかのぼって鳥瞰できます。もちろん、大学教育の大衆化と、学生運動は大きな影響を及ぼしましたが、昭和初期に高等教育が拡張し、多くの専門学校が大学に昇格したとき、学生たちの学費値上げ反対闘争が起こっていたんですね。同盟休校なんかも頻繁に起こっていたそうです(117頁)。

本書には、全共闘運動をめぐる著者と小池百合子の対談も収録されていて、興味深かったです。まだ私が大学に入学した頃もわずかにその残り香がありました。当時の学生の下宿には高橋和巳や大江健三郎、安部公房、吉本隆明、倉橋由美子の作品が同じように揃っていた、なんて、そうですね、先輩の下宿先なんかにはありましたね。同級生はもう読書傾向が変わってしまっていました。

私が大学院に入った頃が浅田彰なんかのニューアカデミズムのブームで、著者によれば、「蝋燭の火が最後に一瞬輝くように近代日本の教養主義が没落するときの最後の輝きであったが、そうであればこそ、教養主義と教養主義者の欠点が露呈したものであった」(12頁)とあります。

確かに人を小馬鹿にしたようなニューアカ信徒が一時エラそうにして、あたりを睥睨していましたが、そういう連中が意外にフランス語ができなかったのはご愛嬌でした。あれはあれで流行りの踊りの所作にすぎなかったんですね。実際のところ、まともに物事を考える力を持った言論人は、あの当時の踊り手からは出てきていませんし。

本書の後半は知識人論に重心が移り、著者の書評や読書日記による、様々な本の紹介が有益です。その中では、以下のような驚くべき話も紹介されています。

・穏健に見える鶴見俊輔が60年安保闘争の時代に、新幹線のこだまを転覆させようと提案していた(179頁)
・あの極右とされた北一輝でさえも、覇権ナショナリズムの危険性を指摘し、批判していた(202頁)
・中国での日本軍のアヘン栽培と販売が、満州国はもとより、東条英機の政治資金になっていた(218頁)

などです。

また、いろいろ読みたくなってきました。

(NTT出版2011年1,700円+税)


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