上橋菜穂子『神の守り人』上・下
この間も読ませてくれました。上下巻が短く感じられるほどでした。それぞれの登場人物が丁寧に人物造形され、緊迫した物語世界を形作っています。
今回は特に荒ぶる神が出てくるので、この血に飢えた異界の存在をどう処理するのか、最後までハラハラさせられました。人類史の闇の部分を垣間見たような気になるくらい、この物語世界はリアリティーがあります。
研究者としての様々な調査や専門文献を読まれた蓄積が物を言っているのでしょう。食べ物とか薬、それから武器について実に納得の行く描写が出てきます。女主人公のバルサの食べたものについて別に『バルサの食卓』という本が出ているのも道理です。何だか実に美味しそうなのです。
いつもながら権力闘争の複雑で微妙な心理も巧みに描かれていて引きこまれます。善玉、悪玉にかかわらず、これくらい深い読みと行動力が一致する政治家が存在する国があったとしたら、本当は問題が起きないんじゃないかと思えるくらいです。
物語の登場人物と比べるのはいかんのですが、知性も度胸も人望も大きく不足している今日のわが国の指導層(政治家だけでなく官僚や経営者を当然含みます)は、もうちょっとどうにかならないものでしょうか。
(軽装版偕成社ポッシュ2008年各945円税込)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント